父ちゃんの夢
10 August 2013 | Kyoto
我慢しとる。わしは我慢しとる。
と思ってたけど、そんなことないんか?独りよがりの思い込みか?
5つ年下の旦那は、マイペースすぎてあわへん。
昼に起きて、飯食って寝て、ぼーっとして寝てる。
あかんやろ。そら怒られるやろ。
でも、私は大人やし、むしろこんなおばはんが嫁で申し訳ないと思うから、何も言わずに、隣で静かに家事をこなしてきたんや。ちょっとだけ。
それに、育休中でありながら、副業もしとる。
そんな時、ぼそっと「いつか香港に一週間だけでいいから行ってみたい」と。
なんですって?
「一週間だけ一人で旅したい」
ふうん。
いやもう、そんなら行ってきて。気が済むまで。できるだけ長く、自分が最も行きたかったところに。
というわけで、旦那がトルコ、イランに一ヶ月行くことになった。息子と私をおいての、一人旅。
私?
さみしいよ。息子に何かあったら、旦那に何かあったら、と思うと不安で仕方ないけれど、これ以上うなだれた旦那をみたくない。
二人で話すときいつも、旦那は自分のやってみたいことをあれこれと語る。けれどその内のたいがいのことを、私は経験してしまっている。
海外での暮らし、一人旅、旅人との出会い。私が話すと彼は興味深そうに頷いてみせる。そしてその度に、自分も、という夢を膨らませる。しかし、それもつかの間、すぐに赤ん坊が泣き声をあげて、現実に引き戻される。
下唇を噛みながら、オムツを変える彼。そんな姿はもうみたくなかった。
行ってきたら、と言うと、彼はにやりと笑った。
ああ、それがしたかったのか。
旅の準備となると、朝も積極的に目覚める。
地図やガイドブックをひろげて熱心に計画をたてる。
一方で私には、旦那が家をあけるさみしさだけじゃなくて、自分が欠けてしまうような空虚感がまとまわりつく。
息子は父ちゃん似の天パやねんから絶対帰ってきてや。